理事長室
熱血理事長の希望日記

言葉の力

2025.03.25

この季節になると大岡信さんの「言葉の力」を思い出す。染織家志村ふくみさんとの対話から美しいピンク色に咲いた桜の花びらを、桜の木が発した言葉であると文章で表現したのが大岡さんだ。中学校教科書に載っている「言葉の力」でこう書いている。「人はよく美しいい言葉、正しいい言葉について語る。しかし美しいと決まっている言葉、正しいと決まっている言葉はない。ある人があるときに発した言葉がどんなに美しかったとしても、別の人がそれを用いたときに同じように美しいとは限らない。それは、言葉というものの本質が、口先だけのもの、語彙だけのものでなくて、それを発している人間全体の世界を否応なしに背負っているからである。人間全体が、ささやかな言葉の一つ一つに反映してしまうからである。」と。桜の木皮でピンク色に染めた着物を手に取り、桜の花びらは、桜の木全体がピンク色になって花の色を出していると志村さんは大岡さんに語る。そして大岡信さんは「言葉の力」にこう書いている。「これは言葉の世界での出来事と同じことではないかという気がする。言葉の一語一語は花びらだといっていい。」と。大岡さんは、言葉を発する人はその言葉になっていなければならない。と言っているのである。

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